だるま親方 レポート

VOL.33 ランカーの方向性  10月18日掲載

様々な要素2

  子供のころ、京都の加茂川でオイカワをよく釣った。オイカワは強い魚で酸に強い。オイカワを釣っていた場所は生活排水が混じって流れている流れ込みで、水面に洗剤の泡が浮いているが、流れ込みの為に酸素が豊富なのかよく釣れた。
 ある時、オイカワを飼ってみようと思い水道水の塩素を抜こうと考えた。塩素は殺菌、漂白作用があるが、かってはナチが毒ガスに使用していたほどであり水道水にそのまま魚を入れると死んでしまう。
 通常は日光に半日当てれば塩素は抜けるが、短時間で塩素を抜こうと考え、煮沸して冷蔵庫で冷やした。これで塩素は抜けたはずである。しかし、数時間後オイカワは全て死んでしまった。なぜか?煮沸した時に酸素が全部とんでしまったためだ。
 そう、魚も生き物である限り酸素の存在は無視出来ない。特に体の大きいランカーは酸素を多く必要とする。今回も見落としがちな要素を解説する。

 まず、なぜ青々とした藻のあるエリアがよく釣れるのか?藻があるということは光合成が行われていることであり、当然酸素も豊富に存在する。酸素があれば生物は快適で、藻が隠れ家にもなるためにバスも当然寄ってくる。しかし、ここに落とし穴がある。
 水の流れがあれば藻が枯れようが酸素は絶えず存在するが、仮に水の動かないエリアの場合、藻がある場合は酸素が豊富にあるが、枯れだすと当然酸素は作られない。それどころか、有機体が腐敗するときは大量の酸素を奪い取ってしまう。
 シャローで腐った藻が大量にあるところや腐敗臭がするところが全く釣れないのはそのためだ。ただ、こんな悪条件にも唯一存在出来る魚がいる。“ブルーギル”だ。
 では、ブルーギルを狙ってバスがこないかって?ありえない。バスの口はすごく大きい50cmだと大人の拳も入るほどだ。ブルーギルのような体高の高い魚でも問題無いと思うだろう。しかし、いくら口が大きくとも食道のサイズは限られている。バスはブルーギルを、“ほおばる”ことは出来るが“飲み込む”ことは出来ない。
 ましてやギルの背中には刺がある。バスの口が大きいのは昆虫を捕まえる網がデカイほど有利なのと同じである。ではランカーなら問題無いかって?ランカーは大量の酸素が必要なために酸素の少ないエリアには存在出来ない。ランカーは冬にシャローで釣れるが温度が低いほど酸素の密度も濃い。冬は酸素が豊富にありランカーは体力があるためにシャローでも活動出来る。ターボ車が冬の方がパワフルなのと同じ理屈だ。
 ラバージグがなぜランカーに効果があるか?太く、短い形状のために食道の大きいランカーしか飲み込めないためだ。そのため、ラバージグでチビは釣れない。チビは細長い形状のルアーが好きなようだ。小さい食道でも飲み込めるためだろう。(名古屋釣りは例外的な効果があるが)
 ブラックバスという魚は餌を捕食するとき食道のサイズを考えて餌を取る。細長い鮎や海老がバスの好物ということからも、それは解る。

 バスは食物連鎖の頂点に位置するがいくら王者といえど餌がなければ生きていけない。そのために子魚が豊富にいるエリアのバスの方が釣りやすい。すなわちシャローである。
 ディープにもいるだろうが、ディープにいる魚はシャローほど活発な捕食モードに入っていない。初めての場所でもシャローなら釣りになるが、ディープエリアは場所をよく知っているベテランだけの物だ。シャローは目で見て確認できるが、ディープは確認できない。
 シャローでは酸素の状態、地面の地形(水中は陸の地形の延長であることが多い)、藻の状態、陸地の植物(水がきれいな所しか生えない植物)、水の状態(かき回して泡がなかなか消えなければ悪い水だ)そして時合になれば足元に子魚が回ってくる。様々な要素をアングラーに教えてくれる。
 友人が昔、PHセンサーやカラーコレクターに投資したが効果は全く無かった。O2センサーがあれば有効かもしれないがそんな物はない。
 それよりも支点を変えて自然を見てみればいかがだろう?

だるま親方


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