だるま親方 レポート

VOL.45 ランカーの方向性  4月4日掲載

視覚と色彩1   協力:T.T

 20年ぐらい前、カラーコレクターという商品が発売された。類似品でカラーセレクターという商品もあったが内容は同じ物だろう。どんな商品かというと、その時の水質を判断して、バスがその時好むカラーを選択するという物だ。
 これが本当なら画期的な商品だが買った人間は殆どが不信感をもったはずである。水道の水に漬けても、野池の水に漬けても同じカラーを示したことがあるし、試しにバケツに水道水を入れて、少しづつ土を交ぜて濁らせていって変化をみたが、性能の御粗末さが解っただけだった。ハッキリ言って使い物にならなかった。だが発売された当時は有名なマスコミプロがカラーコレクターを使いだしてから釣果が40倍差がついたと言っていたし、アメリカでは発売されるルアーのカラーがカラーコレクター対応になっていた。
 カラーコレクターをフルに使おうと思えばルアーを全色揃えなければいけない。メーカーは笑いが止まらないだろうがユーザーはそこまで馬鹿ではない。この商品はアットいうまに消えてしまった。

 では現在の技術で完ぺきな性能のカラーコレクターを作ったら使いものになるか?ハッキリ言って水質だけでは色を決定することはできない。なぜなら同じクリヤーな水質の所でも緑の藻の上を釣る場合と茶色の岩の上を釣る場合では当然異なるし、止めている時はリアルカラーでいいが、ジャークのようにルアーの視認性が悪くなる時は赤やファイヤータイガーのような派手な色がいいだろう。昼と夕方、晴と曇でも当然ことなるはずだ。
 だが本音を言えばそこまでシビヤな選択を求められる状況は殆ど無い。本音を言えばプラグなら、ゴーストアユとファイヤータイガー(別にシャッドとチャートでもいい)のような両極端な2色、ワームなら、3、4色。めんどくさかったら黒一色でも殆どの場合なんとかなる。
 ワームの黒はある意味究極のカラーである。自然界では生物は地味な色が多いが真っ黒な生物は少ない。黒はコントラストがハッキリするので地味でありながら目立つ(特に夜)。それと黒は交ぜ物の関係かワームでは他の色より素材が柔らかい為に黒でテールが堅くて動かないワームは、まず無い。

 カラーセレクトは重要な要素ではある。バスはおそらくマグロのように色盲ではないからだ。しかし今流行のルアーのようにゴチャゴチャと書き込まれた模様は全く無意味だろう。なぜなら魚は近眼だからだ。
 人間の基準で言うと、ブルーギルで視力0・1以下、ラージマウスでもやっと0・2以下でしかない。これは広い視野と引き替えにそうなったのかもしれない。だが魚の視力をナメてはいけない。魚は新聞の文字は読めないかもしれないが、像を認識する力は人間を遥かに凌ぐ。
 テレビはNTSC方式の場合1/60秒で画面の半分を書き替える。人間の目はついていけないので連続した動きに見える。しかし、ある実験ではブルーギルに図形を見せて、どの程度の時間まで反応するか調べたところ条件さえよければ1/300000秒まで識別可能であったという。
 これは魚がチラッと見ただけでも、瞬時に獲物か敵かを判断できることを意味する。だからルアーフィッシングで細かな模様より全体像と動きがいかに重要かが解る。

 魚が餌か敵かを視覚から得られる情報は全体像と動きだけだ。漁師や狩人が使うオトリ(イカ釣りのエギでもいい)は人間の目にはとても御粗末に映る。しかし獲物が取れないと収入が得られない漁師や狩人が本物ではなく、あえて偽物を使用する。
 なぜか?それは特徴を掴んだオトリは本物以上に効果があるからだ。だがルアーメーカーは「魚の色彩が完全に解りました。視力も悪いので有効な塗装はシンプルでもかまいません。」とは決して言わない。なぜなら見た目が御粗末なルアーは驚異的な能力を仮に持っていたとしても、絶対に売れないからだ。
 ルアーは魚を釣る能力より人間を釣る(売れる)ほうが重要なのだ。だから本当に有効なルアーというのを、もう一度考えなおしてみてはどうだろう。

だるま親方


だるま親方コーナーに戻る

連絡先:harenao@hotmail.com