だるま親方 レポート

VOL.47 ランカーの方向性  5月2日掲載

ゴーストフィッシング

 釣りに行って、入りたいピンスポットに先行者がいた場合、多くの場合はがっかりするものだ。しかし、その日、朝から人が釣りをしていなくても、日の出と同時に釣りをずっと始める先行者がいる。それは切れて水中を漂うロストルアーだ。今回は漁師が捨てた漁具や釣り人が捨てた仕掛けに魚が掛かって死んでしまうゴーストフィッシングについて書いてみたいと思う。

 ルアーフィッシングの中でもバスフィッシングは、ルアーを障害物に当てろと言われる。(現実にはもっと効果的な方法もあるが、)だから皆、水中に沈んだ漁礁、岩、マンメイドストラクチャーをタイトに攻める。
 その結果どうだろう?水中には切れたワームが多数漂うことになる。閉鎖された野池などは、水の動きがあまりないが、琵琶湖では、特に北では湖流の流れがあり、切れたワームは一番理想的な場所でユラユラと漂い続けることになる。
 ルアーのアクションでルアーを一ヶ所で止めておくというのがあるが、これはある意味究極のテクニックだ。しかし、ラインが水に流されたり、人間の忍耐が続かない等の理由で中々それは難しい。
 しかし、切れたルアーは障害物の在る場所で、この究極のアクションをずっとやり続けてしまう。魚もそのうち見破るだろうが、プレッシャーがかかり続けるのも確かである。こんな場所の魚は、釣り人が居なくても一日中ルアーを見続けてしまうので、始めからある程度プレッシャーがかかっている。
 現に閉鎖された漁港などでは、ゴーストフィッシングと人間の連日のハイプレッシャーで魚が神経症にかかり、餌を食わずに餓死してしまうこともあるようだ。全てが切れたルアーのせいとは言えないが、切れたワームが無数に漂っているところで、繊細なワームの操作は効果が半減してしまう。スレきった漁港で小型のプラグが効果があるのは、そんなところか?

 話はそれるが、漁港で上がるランカーは殆どが、ボートなどで釣ってきて漁港に放したバスだろう。現に7〜8年前の雄琴港ではトーナメントの2、3日後からバタバタとランカーが釣れた。
 ランカーバスは最強で肉体が強いために、湖の一番良い所を独占できる、だから漁港のような所にいる必要はない。だが、老齢のために、一旦いいエリアから無理に人間が移動させると、対応しきれずに普段なら見向きもしないルアーに掛かってしまう。(空腹による)
 ランカーを釣ったことのある人なら分かるだろうが、別にランカーと言って特殊なテクニックがいるわけではない。むしろ、当たりは細かいが大きい魚の当たりは特徴があるし、一回ルアーをくわえると簡単には放さない。条件さえ知っていれば釣りやすい魚と言えるだろう。ではなぜ釣れないか?単に数がいないだけだ。
 ひと昔前はそうだった。しかし現在では幼いころから、ゴーストフィッシングと人間によるプレッシャーに教育されルアーに反応しにくい個体しかランカーになれないという皮肉な結果になっている。
 このような魚はいかなるルアーにも滅多に反応しない。釣りやすい、釣りにくいは後天的要素であるが、仲間が釣られる所と、ゴーストフィッシングで確実にルアーを学んでいる。
 ランカーバスを釣る人間と何人も話したが、口だけの人間はやたらとテクニックや専用タックルの能書きを話したがる。だが本当にコンスタントにランカーを釣る人間は、ハッキリとは決して言わないが、結局場所だった。
 ランカーは一番いい場所を独占する。だからその場所からランカーを釣り上げても、また別のランカーが入る。いつもランカーを釣る人間は、そんな場所を幾つも持っているのだ。
 そんな場所のランカーはあまりルアーを見たことがない奴が多い。魚は学習機能があるが、最高でも数ヶ月。幼少のころ釣られても、大きくなり一等場所を独占する間に、ルアーの存在を忘れてしまう。
 私も同船させてもらったことがあるが、釣れるところでは、ルアーを垂らすだけで、あっさり釣れた。そして彼らが一番恐れるのは、ゴーストフィッシングだ。湖で最高の場所でもルアーが鈴なりになると、大きい魚はよりつかず、小バスの巣になってしまう。だから、彼らは決して場所を言わない、ランカーに通用するテクニックも存在するが、自分から言うことがない。

 ランカーには2種類いる。人間があまり攻めない場所(沖の変化等)で育った奴は釣りやすい。通常ランカーをコンスタントに釣る奴は、これらの魚を狙う。しかし、人が頻繁に攻める場所にもランカーはいる。ゴーストフィッシングとプレッシャーでも生き残ってきたやつだ。これらの魚はルアーに極めて反応しにくい。現に何かのひょうしでまぐれで釣れた時、口の中に傷がないからだ。
 通常のランカーは釣りきってしまった。これからはゴーストフィッシングでスレきった奴を相手にする時代かもしれない。今の私にその技術はないが。

だるま親方


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