だるま親方 レポート

VOL.49 ランカーの方向性  5月30日掲載

疑似餌

協力 T.T

 ルアー、言うまでもなく偽物を使って魚を釣る疑似餌を使う釣りである。水中に落としたティースプーンに鱒が食いつき、スプーンが生まれたのは真偽は別として有名な話である。では疑似餌は何時の時代からあったのか?針の形は起源前から変わっていず、人類の釣りの歴史と疑似餌の歴史は(広い意味での偽物)ほぼ同じだろう。今回は原点に返ってみたいと思う。

 日本でも職業漁師の間で古来から疑似餌が使われてきた。スズキの疑似餌は落としたキセルにスズキが食いついたという伝説も残っている。
 それとは別にサワラの突き魚法などは、木製の餌木や鯉のぼりのような吹き流しを使ってサワラを海面に引き寄せ、突く魚法である。
 木製の餌木は現在の日本のデコレーションルアーを見慣れた目には、とても粗末に映るがサワラを呼び寄せるのに凄まじい能力をもっている。餌木は漁師自身が木から削り出すが熟練漁師はノウハウがあり、見た目はどれもお世辞にも綺麗とは言えないが、熟練者とペーペーが作る餌木では明らかな差が出るらしい。
 また鯉のぼりの様な吹き流しは、背中を黒く、腹を白く塗っているが、これもとても魚には見えない、しかし腹と背中を逆さに塗ると、サワラは決して寄ってこないという。

 昔、スプーンに桜の花びらを刺して投げてみると私一人だけ入れ食いになったことがある。花びらが取れると魚は沈黙し、付けるとまた狂気した。同じルアーでも少しの違いで釣果は10倍違う時もある。
 しかし、サワラの吹き流しの話じゃないが、少しの過ちが致命的な欠点になっているかもしれない。

 疑似餌は決して釣れない釣りではない。ルアーは売れることが全てだが、職業漁師は釣果が全てである。渓流に岩魚を釣りに行った時に一匹も釣れず、山小屋で店主が釣った岩魚を買った時、店主になんで釣ったか聞いた。こちらはフライフィッシングで丸ボーズだったので、生き餌だろうと思っていたら、なんと毛針という。「なぜ生き餌を使わないのか?」聞くと、数が釣れないという答が返ってきた。大物を釣る時は、ドバミミズを使うが、熟練すれば毛針が一番数が釣れるとのことだ。
 試しにと店主が巻いた毛針をもらって釣ってみると確かに釣れる。もう一度店主に毛針の話を聞くと私が使っているフライはゴチャゴチャしすぎている。疑似餌は全て、魚が好む特徴を備えていれば単純なほうが、特徴をよりアピールすることが出来るそうだ。
 この言葉は今でも私の釣りの教訓になっている。

 人間は高等動物であるために(ゴミを捨てる奴は下等動物だが)下等動物の行動パターンに振り回されてしまう。トゲウオは産卵期に赤い色に反応し攻撃するが、赤ならなんでもよく形やサイズは関係ないようだ。
 トゲウオの例は極端でよく知られているが、意外と伝統的な疑似餌を使った魚法は人間からすればあまりに単純で理解に苦しむ物が多い。
 だがそれは魚と人間の反応するパターンが異なるからかもしれない。人間も赤ん坊が親を認識するために、マルが三つあれば顔に見えるという能力(本能か?)をもっている。単なる模様や景色なのに心霊写真と大騒ぎしたりするのは経験があるだろう。
 職業漁師が使う疑似餌を話を聞いたり、文献で調べてみると、本物そっくりという疑似餌は希で非常にシンプルなものが多い。
 今まで何人にも職業漁師の話を聞いたが、似せる必要は必ずしもなく、むしろ人間の目にソックリに見える疑似餌は形の犠牲になり、ロクな動きをしないそうだ。

 今までの話をまとめてバスに話をもどすが、日本製の場合、有名メーカーや仕上げの綺麗なメーカーほど平均よく釣れハズレがない。
 矛盾するようだが、仕上げが綺麗でないと日本の場合、おそらく売れないので、仕上げさえ雑なメーカーは中身にこだわる余裕がないのだろう。
 しかし大アタリのルアーは経験上、有名、無名は関係なかった。漁師が作る餌木の選別でさえ、最後は魚の反応のいいものが優れた餌木であり、ベテラン漁師自身でさえも何が魚を誘因するか完全には解っていない。
 だから市販ルアーにも制作者が意図しなかった大アタリルアーが無名メーカーにも埋もれているかもしれない。
 本当は仕上げが工芸的に美しく、人間を満足させ、魚がよく釣れれば最高なのだが。

 《追記》
 この前のメールマガジンでバスの舌と味覚の話を書いたが、バスは舌と唇に味を感じる機能があるようだ。斎藤氏にショートバイト対策に「味つきワームを使え」と教えて頂き、使用すると確かに魚が離さない。(フォーミュラーによっては、余計ショートバイトになるのもあるが)
 バスは味を感じる機能があるようだ。(自然の餌では味覚上の好き嫌いはないと思うが)
 私と斎藤氏の経験で意見の食い違いがあったが斎藤氏の経験が正しかったことになる。これからも間違いは認めてすぐに掲載していきたいと思う。

だるま親方


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