だるま親方 レポート

VOL.52 ランカーの方向性  7月11日掲載

個体差

 資源には限りがある。鉱物資源は使えば使うほど減り、最後にはなくなってしまう。
 では生物資源は?動物や魚は全体から少しずつなら、人間が狩りをしても自然に繁殖する。しかし、一度に多くを取りすぎてしまうと、生物はその地域から壊滅してしまう。狩りも漁も取りすぎると個体は減る。

 では釣りはどうか?皆も経験があるだろう。最初はよく釣れた場所が、そのうちスレてしまい。魚がいるのに釣れない。釣りという行為に関しては、漁具を使う漁と違い、魚を全滅させる前にスレさせて、釣りが成り立たなくなってしまう。(魚は悠々と泳いでいるのに)

 NeverSummerの凄腕ガイド、たつきちさんにガイドのコツを聞いたことがある。
 それは一ヶ所で反応するバスの数は限られているので、自分が釣りをせずにお客さんに釣りやすい魚を釣ってもらい。一通り反応が鈍くなってから自分が釣りをするそうだ。
(真似をしてはいけない。私のようなアベレージアングラーが真似をするとボーズ確実だ)

 彼も最初に釣りやすい魚を釣ってしまうと、後は極めて釣りに悔い魚しか残らないのを経験的に知っている。
 では釣りやすい魚と釣りに悔い魚の差はなんなのか?今回は個体差について考えて見たいと思う。

 経験が無い人もいるかもしれないが、全くスレていない所で釣りをすると(現在の日本にはそんな場所はない。あくまで15年前)バイブレーションプラグ等のやかましいルアーにデカイ魚から順に釣れ、段々サイズが落ちてくる。それはそうだろう。人間でもひ弱な奴でケンカが大好きという奴はいない。バスも同じで強い個体ほどケンカ(イジメか?)が好き、闘争心が強いはずである。
 しかし現在のフィールドでは、全く逆の場合がほとんどだ。
 なぜか?経験の無い若い魚は好奇心旺盛だが、今のフィールドで生き残ってきたランカーは、幼いころにフックを経験するか、仲間が釣られる所を見て確実にルアーを学んでいる。群れているとなりの魚の不幸を見るというところか?

 余談だが、バスも群れを作ることがある。群れの定義というのは難しいが、ここでは集団行動と理解してもらいたい。
 例えばゴンズイはフェロモンを出して、密な群れを作る。ゴンズイは毒を持つ魚なので、密な群れを作られると捕食者も容易には近づけない。ゴンズイの場合は本当に協力して群れを作っているが、他の魚は必ずしもそうではない。
 群れというのはそれ自体が監視する機能を持った、移動するストラクチャーだが、群れの外側ほど危険なので、魚は群れの奥へ奥へと入ろうとする。だから協力しているのではなく、お互い利己的に利用しあっているにすぎない。
 バスの群れもこれに近いだろう。バスがライオンのように役割分担を決めて狩りをすることはない。集団で行動するがお互い好き勝手にやっているだけだ。
 鯉の群れに餌を投げると狂気して群れが移動する。今度は試しに木くずを投げる。群れは狂気して木くずに向かうが、一匹がくわえて、食料ではないと判断して吐き出すと、それを見ていた他の鯉は木くずに対する興味を一斉に失う。バスも同じでスレていない時期は釣られたバスの後ろを数匹の仲間が追いかけることもあるが、プレッシャーがかかりだすと、仲間が釣られるのを見て危険な物を学習するようだ。

 よく釣り人が口にするのが、アホ魚が釣られて利口な奴が生き残ると言われる。これはジャンルを問わずに殆ど全ての釣りで言われているだろう。そして利口な奴の子孫が生き残る。記憶が子孫に伝授される。私も馬鹿らしいと思いながら、そう考えていた。
 現に昔、驚異的な効果があったルアーは現在はサッパリということが多い。

 だが、よくよく考えてみると、バスは特徴として、スレてくる程細かい動きにしか反応しなくなる。そして現在のプラグは殆どが細かい動きをする。昔のルアーほど動きが荒いので、現在のプラグを見慣れたバスが反応が鈍くなるのは当たり前か?昔のルアーでも、モデルAのような細かい動きをするルアーは、今でも効果がある。
 魚のスレかたは、実験では生き餌を使った仕掛けでは、あまり魚がスレないが、ルアーを使った実験では生き餌の数十倍魚がスレたという。そして野生の個体よりも、人工飼育された個体の方が釣りやすいという結果がでたそうだが、私は少し意義をはさみたい。私は学者でもなければ釣り名人でもない。あくまでアベレージアングラーとしての意見である。個体差は先天的か後天的要素なのか、次回で私なりの結論を書きたいと思う。

だるま親方


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