だるま親方 レポート

VOL.53 ランカーの方向性  8月1日掲載

個体差2

 『放流釣場でボーズ』 情けないので皆語りたがらないが、実際にこれをくらった人を何人も知っている。現実問題、私もくらったことがある。餌釣りでは、まず起こらない『放流釣り場のボーズ』。しかし、ワーム禁止の放流釣り場では、昔はしばしば起こった。なぜ昔か?と言うと、昔は放流釣り場専用の極小ルアーなどが売っていなかったからだ。個体差の要素を考える上で今回は養殖魚の話から始めたいと思う。

 昔、知人の放流釣り場に泊りで釣りに行った時に台風で本流が大濁り、特別に養殖ニジマスが沢山入ったプールで釣りをさせてもらったことがある。
 まず最初にスピナーを投げる。ルアーを始めて見る魚ばかりのはずなのに興味をしめした個体は全体の内の一割以下、最初の2、3投で2匹釣った時点で興味を魚はなくし、全く反応しなくなってしまった。
 こんどはイクラを使ってのべ竿で釣ってみる。10匹位から反応はするが、明らかに渋くなってきた。イクラをバラ巻くと魚は反応するのに仕掛けには見向きしない。糸がついていると不自然なのか?これでは養殖池でなく本流のニジマスのほうが遥かに釣りやすい。

 おかしい?そのことを知人に尋ねると一笑にふされた。
「お客さんから、お金をもらって、時間に放流するニジマスは釣ってもらうために数日間餌をやらない。ニジマスはもともとルアーにはそんなに反応しない。シロートさんにも愉しく釣ってもらうために餌をぬくんだ。このプールの魚は昨日餌をやったばかりだよ。」

 他のお客には言うなよという条件つきで効果的な方法を教えてもらった。
 なんと海釣りで使っているレンガを使うと言う。それを使うと満腹のはずのプールの魚が狂気して食いつき、30匹釣ったところで、「もうやめろ」となった。スレっからしの本流の残りマスもレンガで簡単に釣れるそうだ。
 知人に「ニジマスがスピナーには2、3投で興味をしめさなくなった。ルアーに食いつくのは、ニジマスの中でも、かなりのアホしか食わないんじゃないか?レンガさえあれば何もいらないな。」と私が言うと、知人は否定した。

 養殖業を何十年もやっていて分かるが、魚に個体の差は少しはあるが、釣り人が思うほど差はないという。最初は皆経験がないが、生き残った魚は数々の経験で危険なことを学ぶために結果的にアホが釣られるように思うだけで、今の賢い大物も幼魚の時は運がよかっただけだそうだ。

 レンガがあれば無敵という、私の浅はかな質問に対しても、
「養殖プールならそうだろうが、本流の残りマスのアタリ餌は毎年変わる。今年はたまたまレンガがあたっただけだ。」と言われた。

 知人の話をまとめると、ニジマスの個体の差と感じるのは、運良く生き残った魚が、学習するためであり、生れつきではないようだ。むしろ、マスでも交配出来るような、近い種でも、(バスなら、フロリダとラージと言うところか)種類が違うだけで、性格、行動、好みの餌が全く違うそうだ。

 この話を思い出した時、魚の種類は全く違うが、意外なほどバスに当てはまることが多い。
 15年前の琵琶湖はまさにバスの養殖池のような状態だった。ルアーを見たこともない魚が殆どで、プラグでガンガン釣れ、場所がだれると、スライダーのような餌に近いルアーでは釣れ続けた。
 セコイワームなら、サイズは落ちてくるが、数時間釣れ続け、クランクベイト等の動きの荒いルアーは後が続き難い傾向があった。そしてヒットルアーを見つければ、バスは根こそぎ釣れた。だがヒットルアーは毎年変わった。

 この状況は養殖池も琵琶湖も変わらない。魚は魚種が違えば習性が変わるがプレッシャーに対する反応は結構共通点があるようだ。
 養殖場の友人が興味深いことを教えてくれた。魚の餌に対する反応は、一つのプールに沢山の魚がいるときは、先を争って餌を食うが、プールの魚の数を一定以下に減らすと競争しなくていいのか、餌に対する執着が消え、おいしくない虫などを放りこんでも、見向きもしないそうだ。
 魚の釣れ難さは、個体による性格の差というより、育った環境の後天的要素のようだ。

 現在の琵琶湖はバスの数は全盛期に比べると安定し、餌は豊富にある。わざわざ空腹でないのに、まずそうなルアーに食いつく必要はない。闘争心を煽ると言うが、殆どの場合ルアーを餌だと思うんじゃないだろうか?。
 人間でも子供のころは決起盛んだが、大人になれば落ち着く、(人間でもケンカ好きは同じ世代で成長が早い子供だ)成長が早いバスほど闘争心が強いので、ランカーバスになる素質があるバスは真っ先に釣られてしまう。現在の釣り人が、わんさか押し掛ける琵琶湖で生き残れるのは、奇跡に近い。ランカーは奇跡の生き残り組なので、釣りにくいが、それ以上に数がいない。

 先天的に釣れにくい個体はいないと思う。運よく生き延びた奴が後天的に学び釣れ難くなるのだ。
 これは、どの魚でもそうだろう。漁師もこの種類の魚は賢いという話しはするし、一つの場所でも最初はよく捕れたが、しばらくするとスレてくる。という話しはするが、最初から釣りにくい、捕れにくいという個体は聞いたことがない。釣堀の鯉も最初はあっさり釣れるが、一度釣られると極端に釣れ難くなるそうだ。

 今回のレポートは私がネバーサマーで知り合った、多くの方の意見を参考にした。みなさんもイベント等で彼らに直接話す機会があれば、私のように今後の釣りにプラスになるような興味深い話しが聞けると思うが。。。

だるま親方


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