だるま親方 レポート

VOL.54 ランカーの方向性  8月22日掲載

恐怖

 飛んで火にいる夏の虫という諺がある。光は光源体から円に広がるが、太陽からはあまりに距離があるために、地球に届く光は真っ直ぐになる。虫の目は光に向かって進む習性があるために、地球の中で新参者の人間が作った人工灯に円を描き、最後はぶつかってしまう。
 だが本来夜に光源は無いのに虫が集まるのは何故か?魚でも鮟鱇は光で獲物を引き寄せる。好奇心?魚はともかく、虫はそこまで高等ではないだろう。だが好奇心と反対の感情、恐怖はかなりの下等生物でも持ち合わせているだろう。今回は魚の恐怖感情について書いてみたい。

  “恐怖”、これは重要な感情で、生物が生まれつき持っている危険を知らせる信号だ。しかし環境によっては、この信号は、かなり変わる。
 バスの餌になるベイトフィッシュは、バスにやる気が無い時は、すぐ側を悠々泳いでいるが、一旦狙いをつけられると、パニックを起こして水面に向かう。バスも水面では空気が混じるためにウマク吸い込めない。バスは餌となる魚が恐怖すると、興奮して追いかける習性があるようだ。
 餌となるベイトフィッシュはどれが危険な魚でどれが危険ではない魚かを学習している。

 知人の養殖業の人間が、実験で湖で取れた子魚のプールに魚食魚(バスとも言う)を放したところ、プールの魚は警戒してバスから離れたそうだ。
 しかし養殖物のプールに同じバスを放しても、魚は警戒心無く食われたそうだ。湖でどれが危険な魚か学習出来なかったからだろう。

 ここで、おもしろい物が見られた。天然物のプールはバスは見境無い捕食を行ったが、養殖物のプールは魚が逃げなかったためか、バスも最初はとまどったようだ。「いつもと違う」と感じたんだろう、しばらくすれば見境がなくなったが。
 水族館のジンベエ鮫は最大級の生物だが、回りの魚はマッタク逃げない。ジンベエ鮫はプランクトンを補食する大人しい鮫である。だが、ホホジロ鮫ならまた異なった反応になるだろう。
 魚は相手がどんなに大きくとも、危険で無いと学習した生物からは逃げないようだ。

 夏場の琵琶湖で泳いでいると、無数のバスが泳いでいる姿を発見出来る。バスは人間から逃げない。また、ジェットスキーが無数に通る所でも、お構いなしにヒットする。人間が無害と分かっているのだ。
 だが釣り人がエレキを踏んで、あるいは立ちこんで近ずくと、スッと離れていく、バスは湖で最強であるために、恐れるものは何も無い。唯一の天敵は人間では無く釣り人なのだろう。

 話を恐怖に戻そう。ルアーフィッシングにおいて、アクションは重要だ。ある程度経験の積んだアングラーなら、一つの法則に気づくいているだろう。
 それはサスペンドプラグ等でスローに動かしている時は比較的細かいアタリがでる。巻物でも棒引きをしている時はバスが同じスピードで食いつくためにアタリが細かい。
 しかし、あるアクションをした時にはガツンと大きなアタリが出る。例えばルアーを巻いていて回収しようと早く巻き出した時などはアタリが大きい。これは後ろから付いてきたバスがルアーを早く巻き出したら、餌に逃避されるように見え、本能が刺激されたんだろう。バスは相手が恐怖して逃げ出す動きに大きく反応する。例えばロッドを動かす時に、加速しながら動かすとか。

 養殖魚のプールに放りこまれたバスは反応が何時もと異なる為にとまどった。バスは細かな動きでも、ちゃんと観察している。
 いろんなルアーを買いそろえるより、手持ちのルアーの動かし方を工夫すれば釣果が上がるかもしれない。

だるま親方


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