だるま親方 レポート

VOL.57 ランカーの方向性  10月10日掲載

味付ルアー

協力T・T

 ワームの素材は酢酸ビニールだ。今から20年前のトーナメントワーム、ジェリーワームは製造上の匂いを消す為にオイルを表面に塗って売られていた。釣具屋で売っている状態では確かに人工的なゴム臭さは消える。しかしワンキャストでオイルは取れてしまい、ほとんど意味はなかった。
 そのためにジェリーワームにはオイルが売られていて、グレープ、オレンジなどの味が付けてあったが、お世辞にも本物のグレープやオレンジの匂いではなく、明らかに化学科学物質のような人工的な匂いだった。今回は味について考えて見たいと思う。

 私個人の意見だが、長いこと匂い付ルアーというものには不信感を持っていた。なぜなら表面に塗るワームオイルはワンキャストで取れてしまうし、バスの集魚パウダーも昔使ったヘラの餌に着色しているだけのものもあった。

 性懲りもなくと言うべきか、匂いつきルアーの歴史は以外と古く、ワームの発展と同時と思われるが、プラグにも大昔にプラグの中に血液をいれて血を流しながら泳ぐルアーもあったようだが、人々の記憶から完全に忘れ去られている所をみると、大した効果はなかったと思われる。だが魚に匂いや味が全く効果がないわけがない。
 漁師はイカ油やニシン油を使ってサンマを集魚するし、動きが気に入らないルアーは魚は食ってくれないが、生き餌ならブツ切りでも食ってくれる。味の効果は確かにある。ではなぜバス用に売られている溶剤があまり効果が期待できないのか?。個人的な意見だがロクに研究もしてない利益優先のお手軽商品が多いからだろう。
 漁師は魚を寄せないと死活問題になる。だから餌の選択のシビアさはバサーの比ではない。しかも我々がおこなっているのはルアーフィッシングで味は食いついてからの要素でルアーは無味な物でもルアーの動きやバサーの技量で魚をヒットさせることが出来る。味と匂いは効果はあるが市販されている物で効果的な物は一部でしかないだろう。

 自動販売機にジュースを買いに行くとオレンジやグレープなどのジュースが数多く売られている。だが果汁が3%にも満たない商品がある。ではなぜオレンジやグレープの味がするのか?それは数十種類の化学物質を合成して、薬品で人工的な味を作っているためだ。ただしこれは開発コストが膨大にかかる。ましてや相手は人間でなくバスだ。極端に限られた市場でそこまでコストをかけて費用を回収出来るかどうかはは経済学者でなくともわかるだろう。

 魚の身体機能は人間とは大きく異なる。某大手メーカのバイブレーションプラグは可聴域が魚と人間で異なるために魚の可聴域に合わせたラトルサウンドを開発した。人間の可聴範囲は20kHzほどだが魚は2kHzほどの可聴範囲しか持ち合わせていない。
 これは高い音は聞けないということだ。カン高いラトル音も実はあまり聞こえていないのかもしれない。余談だが同じバイブレーションプラグでラトルとノンラトルがあれば、ノンラトルは大体動きが悪く、ゆっくり引けない、ラトルは中で重心が移動するのと、ノンラトルに比べて、同じ大きさなら軽い為にゆっくり引ける。だから必ずしもノンラトルがタフ用とは限らない。

 味の場合も同じで、漁師が使用する餌は強烈な臭いがするが、さかなと人間で反応が違うために味オンチというわけでわない。糞に含まれるスカトロールは人間には耐えられない悪臭だが、魚はスカトロールから逃げない。だが、にがみを交ぜた練り餌は絶対に食わないところを見ると、生まれつき、危険を味で識別出来る能力はそなわっているようだ。

 人間は加工食品で化学物質の味に慣れている。化学調味料しかり、人工香料しかりである。これは揮発物質の洗剤や香水の香りの技術と同じもので、床洗剤も高級香水も同じ技術の上になりたっている。共通しているのは開発費はともかく、製造コストは極めて安いことだ。
 例えばカビ取り剤は次亜塩素酸ナトリウムを使っているし、汚れ落としは10%未満の塩酸だ(10%を超えると許可がいるため)。これらの開発費はともかく、製造コストの単価の低さには、あなたも驚くだろう。

 薬品に親しんでいない発展途上国の原住民には薬は驚異的な威力を発揮する。バスは当然薬品には親しんでいないので人工的な味には無防備だ。大手のメーカーがもし本気で資本を投入して開発すれば、ルアーが生き餌をしのぐ効果の商品も出来るかもしれない。

 先日、某凄腕ガイドと釣りをした。本来ならとても勝負にならないが、アメリカ製大手(資本を回収出来る市場規模があるのはアメリカだけだろう)の匂いつきルアーを使うと、私のルアーの操作の御粗末さをカバーして、それなりに釣れた。最近の匂いつきルアーは昔の物と違い確かに効果がある。だが、環境問題、ルアーフィッシングが本来もつゲーム性の点ではどうだろう。考えを押し付けるつもりはない。それぞれが判断すればいいと思う。

だるま親方


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